比賀流 快楽的セルフビルド入門

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第3回 コン打込み [ 初級編1 ] 配筋 ・ 型枠建込み

「作業棟」の内部敷地内には3つの建物を計画した。
まず最初に「作業棟」から開始。
作業棟は、残る2棟の建設時には
資材の加工小屋としても使う予定だ。

まだ初級のセルフビルダーだった僕は、
この棟の建築を通して、僕なりのやり方を学んでいった。
今回はその、ベースコン打込みから立上がり壁の
配筋・型枠建込みまでのノウハウを開陳!



子供のときから、せっかちな性格だった。プラモデルを買っても、説明書を読むのももどかしくて、いきなり組み立ててしまい失敗することが常であった。なのに、である。性懲りもなく、今回も眼紙に描いた図面だけを手に建設開始!わがセルフビルドの記念すべきスタートは「作業棟」から始まった。


アリモノで始めた 「 作業棟 」 建設。 「 根切り 」 からは本格的肉体労働へ

とにかく、作業場の工事をやりながら建築に関する知識を積み上げるつもりだったので、単純な矩形の布基礎の上にパネルの壁、トラス工法の小屋組といったオーソドクスな構造を採用した。まさにセルフビルド入門のための建物だったといえる。入門編にふさわしく、測量の道具も原始的であった。バケツとビニールホース、ありあわせの材料で自作した大きな木製の直角三角形(大ガネ)。そして巻尺が用具のすべてだった。そうそう、小さな電算機と、数学の教科書からコピーした三角関数の表も不可欠な用具だった。

まず、地面に建物と同じ大きさの長方形を描く。大ガネで大まかに描いた後で、対角線の長さを測って修正する。さらに、1~2m外側にひとまわり大きな長方形を描く。運動会のときに使うラインマーカーでもあれば理想的だが、棒切レで引いてもかまわない。外側の矩形に沿って1~1.5m間隔で杭を打ち込み、水盛りをして、杭に均一のレベルのしるしをつける。ホースの中に気泡が残っていないかよく確かめる。途中でバケツを倒すと最初からやり直しになってしまうので、バケツとホースはしっかりと固定しよう。

まず手始めの、作業棟(プラン)

レベルが出たらそれを基準にして地面の高さ、布基礎の上っ端の高さに印をつける。全部の杭に印をつけ終わったら、印に合わせて横板(遣り方)を打ちつけていく。建築予定地の周りをぐるりと柵で囲ったような状態になっているはずだ。次は肉体労働だ。内側の長方形(建物の平面)の線に沿って穴を掘っていく(根切り)。穴の幅は広いにこしたことはないが、それだけ多くの労力とコンクリートが必要になってくる。穴の深さも同様で深いにこしたことはない。少なくとも凍結深度までは掘らなければならない。作業場の大きさは、7m×13.5m。幅50cm、深さ50cmとすると、総延長は40m、穴の容積は10立米(りゅうべい=立方メートル)にもなる。

これをスコップで掘りだすとすれば地獄のような重労働である。いまどき、刑務所でもこんなことはさせない。ところが、どんなポンコツでも、ユンボと名のつく機械があれば、この作業は数時間で終えることが出来る。一人で作業する場合、機械の力は必要不可欠なものなのだ。計画性のある人ならレンタルでも機械を利用できるが、気ままに作業をすすめたい人は「相棒」として格安の(できればタダの)土木機械を入手することも考えていいと思う。


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基礎コンクリート打設は、省力型 「 せっかち工法で 」

ベースコンの「せっかち工法」!掘り終えた穴の中に石を詰めていく。砂利を敷くのが一般的だが、砂利は高価だし(10tダンプで2~3万円)、林道の工事現場からもらってきた石がたくさん残っていたのだ。ユンボのバケットで充分に叩いた石の上に鉄筋を編んでいく。鉄筋は基本的に直径12mmの物を使用した。それ以上太くなると現場での加工が難しくなるためだが、細い分だけたくさんの本数が必要になる。最低300mm位のピッチは欲しい。

作業場のベース・コンクリートは、捨てコンも木枠も使わないせっかち工法で行った。多少、生コンが多めにいるが、強度に問題はない。ただし、ベースに入れる鉄筋は必ず石の上に並べて、地面と離しておくこと。鉄筋はむき出しの部分があると、そこから腐食が広がってしまうのだ。(いわゆる「カブリ不足」というヤツだ)どうせ、腐食が建物の強度にまで影響してくるのは数十年も先のことだし、関係ないという人はかまわないが、自分の造るものに少しでもこだわりを感じる人であれば、やはり気を配ったほうがよい。

ベース筋を並べ終えたら、立ちあがりの鉄筋を取り付けていく。壁の高さより長めにカットした鉄筋をL字形に曲げて使用する。簡単な曲げ加工には鉄パイプが便利だ。水道管の切れ端でもあれば充分で、邪魔にならない場所に固定しておく。短い鉄筋の場合はもう一本別の鉄パイプも併用して曲げる。

水道管で思い出したが、コンクリートを打つ前に地下に埋設する給排水管、電気の配線などは準備を終えておくことが必要だ。これらの工事については後でまとめてふれる。立ちあがりの配筋は、きちんと位置ぎめして取り付けたほうがよい。遣り方につけた印に水糸を張り、それに合わせてベース筋に取り付けていく。横筋を一本通しておくと固定しやすいだろう。


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コンクリート打込み前夜。いそいそと 「 その時 」 を待つ・・・

生コンの打ち込みは、季節によって打ち込み開始時間を調整する。気温が高くて乾燥の早い時期は午後一(午後一番の便)から、冬場の日の短い時期は朝一(早朝一番目の便)で。とにかくコンクリートが乾燥する前に作業を終えてしまわなければならないので、時間との競争になる。ミキサー車を呼ぶ日は、いつも前日からあわただしい雰囲気になってしまう。作業棟のベースコン打ちの時はミキサー車から直接コンクリートを流し込めたので、RC工事の入門編としてはうってつけであった。

捨てコンなし、型枠無しのせっかち工法でもレベルにだけは気を使ったほうがよい立ちあがりの配筋に印を付けておくのだが、マジックインキやビニールテープでは跳ね上がるコンクリートで見えなくなってしまうので、番線か結束線を結びつけておく。一人で打ちこみをやっていると、見かねてミキサー車の運転手さんが手助けしてくれることがしばしばあった。彼らはいろんな現場を回っており、大抵のことは知っている。セパの使い方、結束線の結び方などたくさんのことも教えてもらった。『さっさと荷をおろして帰りたい』思いもあったのだろうが、とにかく親切な人が多かった。それまでは、ダンプやミキサー車の運転手は乱暴な荒くれ者だとばかり思っていたので、それは新鮮な発見だった。


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立上がりの型枠建込み。 「 パンク 」 にはくれぐれも用心

ベースコンを打ち終えると、改めてその上に線を打つ。チョークライナーを使うと簡単に直線を出すことが出来る。その線に合わせてコンパネを組んでいくことになるので要所はマジックでなぞっておいた方がよい。作業を簡単にするために立ちあがり壁の高さはコンパネ一枚分(900mm)にした。割り振りも二度三度の使用を考えてなるべくパネルをカットしないように工夫する。

セパレーター(セパ)には、同じ壁厚でも、Pコン用とナット用がある。打ち放しの場合はPコン用を使うが、作業棟では、上から化粧をするのでナット用を使った。コンパネも同様に安価なラワンコンパネ(安売り店で800円位)を使用したが、打ち放しの場合はウレタン塗装コンパネ(同・1200円位)の使用をお勧めする。仕上がりに格段の差があるし、使用できる回数も多いので結果的には安上がりだ。

型枠の組み方は文章よりもわかりやすいと思うので図解した。ひとつだけ念押ししたいのは、液状の時のコンクリートの圧力を決して甘く見てはいけないということだ。ミスや手抜きを決して見逃さないし、いったん型枠が破裂したらその後始末には膨大な労力が必要になる。両面のパネルをセパで連結し終えると相当にしっかりした枠となるが、生コンを入れる時には叩いたりゆすったり、場合によっては人が乗ったりもするので念には念をいれよう。壁の断面が出る場所やコーナー部分は圧がかかるところなので特に念入りにパネルを固定する。ホームタイに番線を巻きつけて締めあげるのが効果的だ。

型枠建込みの手順

準備万端整ったらいよいよ生コン打ちだ。ベースコンは流しっぱなしだし地面の下で見えなくなるが、立ちあがりの壁面は事情が異なる。表面には化粧を施すとはいえ膨らんだり”巣”が出来ると建物の強度にも影響が出る。念をいれたつもりだけど、万一、枠が破裂しては大変だ。さすがに緊張してしまう。前もって木鎚やコテ、アンカーボルトなどをいそいそと用意し、満を持してミキサー車を待つ。

第4回へつづく・・・


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コラム

ひとくちコラム 「 僕の先生達 」 の巻

工事を始めた頃はわからないことばかりで殆ど手さぐりの状態だった。
唯一の頼りは設計の山崎氏であったが、彼はキーボード上のヘルプキーのように、
心強くももどかしい存在であった。
知りたいことの多くは『この金具はどこで手に入るのか?』とか
『結束線はどのように締めるのか?』といった些細なものであり、さもなければ
『これは本当に完成させることが出来るのだろうか?』という内向する疑問だったからだ。

造成工事を始めるといろんな人がたずねてきた。
殆どが地元の人達で、何が始まったのか覗きに来たのだ。
カラスかウサギしかいない孤独な作業を連日続けていたので、
誰かが来るとつい話しこんでしまう。

判ってきたことは、村の人の多くはフリータ-らしいということだった。
農繁期には谷合の田で働き、東に道路工事あればスコップを握り、
西に伐採現場あれば行ってチェーンソーを振るう。何でもこなす!
現金収入は限られてくるから自分のことも大抵は自身でこなす。
村の生活ではD・I・Yは昔から当然のように行われていたのだ。

一人で建てたという納屋や、布基礎を見せてもらったりもした。
おかげで内向するタイプの疑問は解消することができた。
本文でもたびたび登場願っている伐採屋の公徳さん(公アニイ)を始めとして、
個人的にもいろんな人達のお世話になった。
長期間自家用ユンボを貸してくれた近所の達夫さん、細かい注文にも応じてくれた
道志鉄工所の和昭さん(おじゃまする度に新鮮野菜のお土産まで頂いた)。
型枠の組み方と釣りの話を教えてくれた『玉川コンクリート』の高部さんや芳野さん。
村のD・I・Yの達人たちが利用している『横山金物店』の鈴木さんには
建築用材全般にわたって沢山のことを教えてもらった。

『横山金物店』は不思議な店で、薄暗い迷路のような店内には
最新型の釘打機から半世紀前の金物までがストックされており、
ふと見上げると昭和20年代のものとおぼしき工具のポスターが壁に貼られていたりして、
ちょっとしたミステリィ・ゾーンのような所である。
鈴木さんは迷路の奥から様々な品を取り出してきては、
それらの使い方を僕にも判るように実演して見せてくれたし、
屋根材を屋根の上まで配達してもらったこともあった。

建築に関してはまったくの素人であった僕が、
ともかく三棟の建物を完成にまでこぎつけることができたのは彼らのお陰であり、
この場を借りて感謝の気持ちを表したいと思う。
僕自身が東京で『学校の先生』を続けていた頃は多少人間嫌いになりかかっていたものだが、
四年間の孤独な作業とそれをサポートしてくれた彼らとの幸福な出会いは、そんな邪念さえ払拭してくれた。
いろんな意味で彼らは敬愛すべき『僕の先生達』なのだ。

村の先生たち


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