比賀流 快楽的セルフビルド入門

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第5回 木工事 [ 初級編2 ] ~小屋組、屋根葺き

「作業棟」からは東京の空が見えるセルフビルド入門編の「作業棟」。
4話目となると今回は、完成した軸組の上に小屋組を載せ、屋根を葺く。
間仕切壁で小部屋やロフトを追加したり、作業のなかで計画変更もアリだ。
小屋組トラスがちっとくらい寸足らずでも、なんとかなるのがセルフビルド。
臨機応変、どんな職方、どんな作業にも対応できるのだ!



前回までの話で、ひととおり「作業棟」の軸組を組み終えた。周囲の壁面ができ上がり建物らしくはなってきたが、たよりない印象が抜けきらない。妻側の壁はともかく、軒側の長い壁は左右に波打っているように見えた。小屋組みを乗せれば強固になることは理屈では理解していても、常日頃から、計算よりも感覚の方を信用しているので安心できないのだ。

そこで、プランを修正。2枚の間仕切壁を補強に入れて、小部屋とした。さらに、各部屋に天井を取り付けるついでに、奥の部分をロフトにした。ロフトの追加は建物全体の歪みを防ぐためにも有効だったし、屋根工事の時も足場として活用されることになるのだった。


組むのは簡単、載せるのが…。小屋組は作業棟の山場だった

小屋組トラス作業棟(そろそろ工房と呼んでもイイかもしれない。)の工程の中での最大の山場は、何といっても小屋組み造りだ。屋根を乗せ終えると建物の外観が完成するし、実際に雨がしのげるという実用性もでてくるが、一番の理由は7M近い大スパンを支える重厚なトラスの作製にある。計算上は三寸五分や四寸材でも大丈夫ということだったが、やはり視覚的な安心感や強度の余裕が欲しいので、梁にはあえて五寸角のものを使用した。 ただし、あまり重くなると作業もしづらくなるので、五寸材には杉を、三寸五分の材には米マツを、と使い分けてみた。

組あげたトラスを持ち上げるのが人力では無理なことは明白だったが、かといってユンボの腕が届く高さでもなかった。高い場所での作業も多くなるので、早めに(ちっとも早くはなかったけれど)組立て式の足場(ビデー?)と、ユニック付きのトラックを手に入れることにした。言うまでもないが、足場もトラックも中古品である。ユンボほどではないにしても、トラックもポンコツの接頭語をつけるにふさわしい代物であった(1年間の車検付きで10万円!)。そして、ポンコツ・ユンボ(連載第2回参照)同様に、それからの作業に、なくてはならない相棒になってくれたのだ。

軸組に小屋組トラスを載せる・垂木を差し掛けて、パネルを張る7組のトラスの制作は、図体がでかいだけに取り回しには苦労するが、けっして難しい作業ではない。邪魔になるので1組できあがる毎に取り付けていった。野積みしていた資材が建物に姿を変えていくのが楽しくて、一気に作り上げてしまった。難題はその取り付けだった。

新入りのユニックは快調で、組上げた400KGほどのトラスを軽々と持ち上げる。アームを振って所定の位置に合わせる。トラスの重みを柱に乗せてしまうと簡単には動かせないので、一本吊りにして浮かせておくのだが、固定するために梯子を上ってみるとトラスは手の届かない場所を浮遊していたりするのだ。猫の手でもカラスのくちばしでもイイ。誰かが軽く抑えていれば難なく終える作業のために何度も梯子することになるのだ。一人で仕事をする『悲哀』は、それからもいろんな場面で味わうことができたが、物事は考えようで、おかげで新入りの扱い方にはすぐに上達した。

RAUNNI(こちらも連載第2回参照)に厳しく鍛えられていたためかもしれない。3組めのトラスを乗せる頃にはアームを微妙に操作して、受けの欠き込みの中にそっと乗せることができるまでになった。

トラスの仮止めはしっかりやっておく必要がある。万一、倒れかかってきたら袋ダタキ程度ではすまない。桁の上に柱材を転び止めとして乗せ、火打ち柱?でしっかりとボルト止めする。

母屋の取り付けは内装の時にケイカル板が丁度入るように910mmづつ間をとっておく。といっても、取り付けた後の木の歪みや作業のしやすさを考えると2~3mmの遊びも入れておいたほうがよい。この遊びの入れ方はなかなか重要で、作業の進捗や仕上がりに大きく影響する。素材の大きさによるが、木のように狂いの大きなもので1~10mm。金属やガラスといったものでは一桁下げて0.1~1.0mmの範囲と考えればいいのではないかと思う。


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母屋を載せたら、総点検。あ、やっぱりミスがあった!

母屋を乗せて建物全体の骨組みが出来あがったところで、もう一度各部の点検を行う。柱の垂直、桁の水平などこの時点であれば修正できるし、そのまま仕上げとなる部分の塗装などもこの時やっておくと作業がらくだ。作業棟の場合、点検の結果大きなミスがあることが判明した。

ロフトを作るために途中で構造を変えた北側の三つのトラスの高さが足りないことが判ったのだ。 そのために母屋が途中から折れ曲がるように下がっていた。どこかで計算を間違ったらしく、トラスの斜辺になる材を短くカットしてしまったのだ。素人大工のやることだからミスがあるのは当然として、大切なのはそれをどのようにしてリカバリーしていくかである。いわゆる『問題解決学習能力』が問われる場面であり、頭の使いどころ、腕の見せどころなのだ。(誰も見てないか)

ロフト上のトラスは、束で支えた構造だったので、まずふたつの斜辺を繋ぎとめていた帯金物をはずしてから、ガレージジャッキで強引に持ち上げる。トラスの頂点にできた隙間に木片を差し込み再び金物で止める。束との間にも隙間ができるが、バールで上に押し上げておいて、浮き上がった下のホゾを包み込むように床材をはさみこむ。屋根よりも床の仕上げが先になるがやむをえないだろう。後で聞いた話しだけど、プロの大工さんでもミスは少なくないそうで、「腕の良さは逃げのうまさで決まる」といわれているらしい (納得!)。


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屋根、壁にパネルを張る。作業性を考え、合板を採用。

寸足らずのトラスはこうしてリカバリ!・パネルを張った壁にアスファルトシールを張る要所はパネルで仮止めしているとはいえ、意外にしっかりとした骨格が出来あがった。これなら大きな地震がきても大丈夫、と、『自信』をつけたところで、まず屋根からパネル貼りに取りかかる。垂木を455mmピッチで取り付け(遊びを忘れずに)、半間ずらしで耐水合板を打ちつけていく。

野地板の方がよいと言う説もあるが、上を歩くとふわふわして心もとない。屋根工事のことを考えると足元はしっかりさせておきたい。

パネルの上にアスファルトの防水シートを貼ると屋根が屋根として機能し始めるので、壁面のパネル貼りの前にそこまではやっておくのだが、屋根工事の時にまとめて話すことにする。

壁面のパネルは、布基礎の型枠で使用したコンパネで必要量の半分ほどを賄うことができた。

屋根のときとは違い、細かい材も必要なので、カットされたものでも充分に活用できるのだ。ただ、組んだ軸組みの補強が目的なので神経質になって細かい所にまで貼りつける必要はない。そうそう、壁面パネルを貼りつける前に開口部の枠を取り付けておいたほうがよい。僕は失敗してしまったので、はみ出したパネルを切り取るのに余計な苦労をさせられた―窓枠などについてもー仕上げ・建具の製作-でまとめるつもりだ。

セメントがこびり付いたパネルを貼り終えたら、ボロ隠しのためにも、早々にアスファルトシートで覆う。100mm位の重ね代をとりながら下の段からステップルで留めていく。加工は容易だし、安価な物なので、隙間ガあかないように丹念に貼っておく。胴縁まで打ちつけておくと、風でめくれることもなくてしっかりする。胴縁は、所々に隙間をあけて、雨が吹きこんだ場合の逃げ道を用意しておいてやるとよい。


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大工、配管工、塗装工… セルフビルダーはナンデモ屋

セルフビルダーはナンデモ屋仕上げの段階に近づくにつれて、作業の順序、いわゆる段取りをつけることが大切になってくる。これがうまく行かないと余計な時間と資材を浪費するだけでなく作業意欲にも影響してくる。一度作ったものを壊さなければならない場合だって出てくるのだ。

経験やマニュアルがあるわけではないから、作業の進展をイメージしていくしかないのだが、セルフビルド゙の場合にはそれなりのメリットもある。大工さん、配管工、塗装業者、etc、etc、すべてを一人でやると言うことは 、臨機応変に必要な作業を進められると言うことなのだ。やり残したことがあったり、途中で仕様を変えたくなっても自由に対応できるのだ。僕は普通の建築現場というものを知らないが、沢山の業者が出入りする現場で段取りを決めていくのが大変な仕事であろうことは容易に推測できる。そんな現場監督さんの苦労に比べれば、自分自身の作業を仕切ることなど苦労の内には入らないだろう。


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金物を付け、防水シートを張る。屋根の雨仕舞は下葺きが重要!

さて、遅ればせながら屋根工事にはいることにしよう。前にも話したように、小屋組みにパネル(野地板)を貼り終えた時点で、アスファルトルーフィングは貼りつけておいたほうがいい。一人での作業では次に取りかかれる予定が立てにくいので、少しでも雨に晒さないようにするためだ。

順序だてて作業するなら、最初は水切金物を取り付ける。軒先には捨唐草、妻側にはケラバという金物を使用する。こういった金物は、都市部のDIY店では見かけないが、田舎の金物屋には沢山の製品がおいてあり、同じ値段で色やサイズの違う物も作ってくれる。水切りは、水仕舞を良くするために、鼻隠しより20~25mm突き出させて取り付ける。金物には返しが付けてあるので、もし、アスファルト・シートまで水が入っても雨漏りしないようになっている。

金物の上からルーフィング・シートを貼る。壁面の時同様に下(軒先)からステップルで留めていく。重ね代は充分に確保したい(100mm以上)。途中でシートが破損した場合も、大きめのものを棟側のシートに挿し込んで補修する。これらのシート類は、建物内部を雨や外気から遮断する役割を果たすもので、簡単な工事だからといっておろそかにする事はできないのだ。外装材となる屋根材や壁板はこれらを保護するシェル(殻)だと考えたほうがよい。


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ルーフィング材に毛の生えた…? 作業棟なので屋根材には妥協

屋根材を葺く初級編なので、屋根材には一番扱いやすいアスファルト・シングルを使用した。安いし、施工も楽なのだが、シェルとなる外装材にしては頼りなさは否めない。都市部では一般の住宅に多用されているが、『ルーフィング材に毛の生えたような物』という見方もあるようで、いきつけの金物屋さんには『あんなもの使うのはよしなさい!』と諭されてしまった。瓦や銅板の立派な屋根が多い地方ではさもありなんとは思うが、簡単な作業場の屋根だからということで納得してもらった。

シングル用の接着剤を裏面に塗り、軒先部分から屋根材用の頭の広い釘を使って留めていく。金物の先端からさらに10mmほど出して、最初の一列は二重にかさね貼りする。軟らかい素材なので風で煽られないようにするためだ。後は順次、棟に向かって貼り重ねていけばよいのだが、ケラバに印を付けるか、シートに墨を打って平行に貼れるように工夫する。最後に棟金物を取り付けると完成だ。

僕の場合、ルーフィング材のまま3ヶ月間放置していたのだが、その間も雨漏りすることはなかった。しかし、ルーフィング材はどうしても風による破損や、劣化しやすいので、週末だけの作業などで長期間仕上げにかかれない場合は養生シートを掛けておく等の対処が必要だろう。作業棟の屋根には明かり取りのために天窓も取り付けたが、その水仕舞についてはのちほど、建具の項で触れることにしよう。

第6回へつづく・・・


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コラム

ひとくちコラム 「 先駆者たち 」 の巻

昼間見かける動物は限られている。
おしゃべりなカラスたち、時折顔を出すウサギやリス、キジなどだ。
毎日聞いているとカラスの鳴き声にもそれぞれに特徴があり、聞き分けることが出来るようになってきた。
ファイト小僧と名づけた一羽の鳴き声はとりわけ独特で遠くからでもそれと判るものだった。
なにしろ『ファイト!ファイト!』を連呼しながら飛び回っているのだから。

お昼前の現場の上空は彼らのたまり場になっていて、
十数羽のカラスが追いかけっこなどをしてじゃれ合っていたが、
ファイト小僧は少し離れた場所にいることが多かった。
もしかしたら『いじめられっ子』だったのかもしれない。

夕暮れ時になるとムササビが出没した。
うがいをするような独特の鳴き声でそれと判る。
現場に残る立ち木の間を四肢を広げて飛び交う姿はなかなか壮観であった。
鹿や猪は日が落ちてから現れる(らしい)。
まだ、猪を見かけたことはないが、村の農家はよく畑を荒らされている。
鹿は好奇心の強い動物のようで、造成中の現場と森との境目に立って
こちらの様子を伺っている姿を何度か見かけた。
少し山に入ると月の輪熊もいるそうで、里に出現した時は村の有線放送が注意を呼びかけている。
これだけ並べたてると、おそろしくへんぴな所だと思われてしまいそうだが、
都心から2時間もかからない場所なのだ。

街中で暮らしていると想像しづらいのだが、
生き物たちの活動範囲は、意外に人間の生活圏の間近にまで迫っていて、
郊外の団地の裏山でも狸やリスくらいは住みついているものなのだ。

建物が完成に近づき、現場で寝起きするようになった頃からファイト小僧の鳴き声を聞かなくなった。
「もっといい遊び場所でも見つけたんだろう。」と気にもかけなかったが、
やがてムササビも上空に飛来しなくなり、森の奥から僅かに鳴き声が届くだけになってしまった。
僕が工事を始める前はこの場所も生き物たちのエリアであったことは間違いない。
つまり彼らにとっては、僕は不法な侵略者なのだ
― 遠まきにして眺めていた鹿の表情がそれを物語っていた。

自分のわがまま行為のために、森の奥へと駆逐されていく彼らに対する、いい知れぬ罪悪感が残された。
累積した作業の疲労感も重なって多少落ち込んでいた時期ではあったのだが・・・・。

そこかしこで新緑が芽吹き始めた5月の初旬、聴き憶えのある鳴き声が耳に入ってきた。
(あいつ、仲間はずれじゃなかったんだ!)
昼前の晴れわたった初夏の空に乱舞するカラスの群れのなかに、
「ファイト!ファイト!」とけたたましく叫びつづけている変わり者の姿があった。

先駆者たち


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