比賀流 快楽的セルフビルド入門

Publish

第6回 木工事 [ 初級編3 ] ~建具・外壁仕上げ

工房の大きなハンガードア当地の三つの建物のうち、最初に建てた「工房(作業棟)」も、
5話めにして完成。既製の建具は高いので、余材を使って自作する。
雨仕舞いの基本を押さえれば、天窓だって難しくない。
見栄え重視の内外装だが、隅部の納まりは大切。

まずは1棟。
つくりあげた充実感で、もうセルフビルドに病みつきだ。



仕上げ工程は段取り勝負-下手をすると隙間が…

先月号でも書いたが、仕上げ段階の工事では、ことさらに手順をよく考えてとりかからなければならない。どれを先にやれば作業が楽か、仕上がりをうまくおさめられるかをイメージする能力が必要になってくる。

順序だてていえば、仕上げに取りかかる前に建具の取り付けは終えている必要がある。開口部の枠に合わせて構造合板や内外装材を取り付けていかないと隙間ガできてしまうからだ。僕はその隙間をアスファルトシートとコ-キング材でふさいだが、段取りを間違わなければ必要のない作業だった。


目次へ戻る




市販建具は高い!ならば、余材で自作すればいい

工房(作業棟)の建具は、ドアや窓、一部の把手に至るまで(建具じゃないが換気扇フードも)自作した。適当な製品が見つからなかったこともあるが、何よりも予算が心配だったからだ。建具は高い!既製のアルミ建具でも高いのに、木製サッシなど注文しようものなら他の二棟の建物が作れなくなってしまう。天窓に至っては論外であろう。

作成したのは引戸が三ヶ所で5枚、開き戸が1枚、ガラス窓が大小25枚、換気用のルーバーが2枚、そして天窓が8枚だ。材料も米マツなど構造材の余りを利用したし、ガラスは全てもらいものですませた。手間と暇はかかったが費用は5~6万円で済んだと思う。ここでは、製作に苦労した出入り口の引き戸と、天窓について書いておく。


目次へ戻る




重量のある引戸にはハンガードアが最適

ハンガードアの製作図三ヶ所の出入り口は、工房らしく広い物にしたかった。大型の扉の場合、開き戸では構造的に難しいので吊り金物を使ったハンガードアにした。引き戸はスペースも取らないので作業で散らかりがちな場所にはうってつけだ。

正面は幅2.6m、高さ2.4m、これを左右二枚の引き戸でカバーする。欧米の納屋や工場の絵を見ると外付けされているものが多いが、布基礎の外面は石張りで化粧をするので内側に下げることにした。

二枚に分けて作るといっても開口部よりひとまわり大きな物にする必要があるので、個々の扉でも1.5×2.5mの大きさが必要だ。強度やデザインを考え合わせて、框戸を両面から斜め板貼りで化粧するかたちに決めた。コンパネに内装用の杉材を打ちつけた鏡板を枠に嵌め込むと、相当にしっかりした扉になった。ただし重い(80kgほどもあっただろうか)ので取り付けにはまたひと汗かくことになった。

ところがである。いったん取り付けて調整を終えると、これがいとも軽々と開閉できるのだ。ハンガードアは、大型の開口部には最適の扉と知った。


目次へ戻る




天窓も基本を押さえれば大丈夫-水は「高きから低きへ」流れる

天窓の製作図一般的な壁面の窓に比べれば天窓のほうが採光がよいに決まっている。細かな作業の多い木工工房としての活用を考えると、手許の明るさは必須。天窓はぜひとも採用したいアイテムだった。

ところが、市販のものには予算的に手が出せないものの、自家製では雨仕舞が心配だ。いろんな仕様を考えてみたが、実際に作り始めると意外に簡単だった。木枠を使って屋根から浮き出させれば雨の浸入は防げるし、額縁として三方から水切り金物で包み込めばガラスも固定できる(下方から雨水を逃がす)。横に流れる雨は、隙間充填材とコ-キング材で防ぐ。浮き出させた枠にふたをするように作れば開閉式の天窓にすることも出来そうだ。

天窓に限らず、屋根や外壁、外部に面した窓など、直接雨があたる場所では常に雨仕舞に気を配る必要があるが、要は、「高きから低きへ」流れる水の特性を念頭において、滞りなく流れ去るように設定をしてやればよいのだ。


目次へ戻る




上を向いての天井工事-首筋が痛む

天窓が付けば、屋根は完成だ。次に取りかかったのは天井のケイカル板の取り付けだ。天井板を先につけておかないと内壁・外壁とも頭を揃えることが出来ないからだ。天井板の打付けはなかなか骨の折れる仕事だ。不安定なビデー(足場)を使い、上を向いての作業になるので、どうしても首筋を痛めてしまう。

さらに、材を支えておくための工夫が必要になる。釘を打つには両手が使えるようにしておかなければならないからだ。コンパネの切れ端を当て木にして、足場の上から角材で支える。こうしておけば材の位置決めもゆっくりできるし、何よりも落ち着いて作業ができる。打ちつける前に、下孔も開けておけばベター。


目次へ戻る




内壁仕上げはフンパツして既製加工材の相決り仕様

天窓板を支えるそうそう、内装材を取り付ける前に断熱材を入れておかなければならない。工房なので断熱材には一番手軽な50mm厚のグラスウールを使用した(1パック=5坪分で4,500円くらい)。作業は説明が必要ないくらい簡単だ。空気の流れを遮断するようにとにかくグラスウールを隙間なく詰め込めばいいのである。場所によっては梱包用の発泡スチロールやガムテープなども利用して断熱効果を高める工夫をする。小さな建物だったら、かき集めた廃材の発泡スチロールだけで施工することだって可能だ。

天井への板の打ちつけはなかなか骨の折れる仕事だ。不安定な足場を使い上を向いての作業になるので、どうしても首筋を痛めてしまう。さらに、材を支えておく為の工夫が必要になる。釘打ちをするためには両手が使えるようにしておかなければならないからだ。コンパネの切れ端をあて木にしてビデーの上から角材で支える。こうしておけば材の位置ぎめもゆっくりできるし、何よりも落ち着いて作業ができる。打ちつける前に下穴もあけておいた方がベターだ。ケイカル板が割れやすいこともあるが、足場上での作業は、なるべく手短に出来るように充分に下準備をしてかかるのが原則で、それを怠るとそれだけ転落の危険が増すことになる。建築だけでなく、一人で何かをする場合一番避けなければならないのが怪我なのだ。手当てをしてくれる人も、連絡を取ってくれる人もいないから、致命傷でなくとも命取りになってしまうのだ。人知れず白骨化してファイト小僧の餌になるのは御免だ。

内装材には板厚15mmの相決り加工材を使った。仕上げカンナをかけられた既製品で、すぐに使えて便利だが、当然高く付く(4~5千円/坪)。杉の製品は木の芯に近い部分から採れる赤みを帯びた材(心材。「赤み」と呼ばれる)と、外周部からの白っぽい材(辺材。「白太」と呼ばれる)が混在しているので、事前に梱包を解いて選り分けておくとよい。色合いが悪い物、節の多い物は目立たない場所に使うようにする。

化粧を目的とした薄い板ではあるが、少しでも壁面の補強になるようにコーナー部分は双方の内装材が構造材にじか付けできるようにした。


目次へ戻る




外壁は目板張りにして建物の高さを強調

屋根材を葺く外壁には内壁に使ったような高価な加工品は避けて製材所で杉の8分材(24mm)を用意してもらった。乾燥させてカンナを通す手間がかかるが費用は半分以下に抑えることができる。加工されてない素材を使う場合の施工方法としては、南京下見、押縁下見、などが考えられるが、工房の外装は、展示棟の意匠とも繋がりを持たせたかったので、目板張りを採用した。

縦縞のストライプは建物の高さが強調できるので、どちらかというと展示棟の外観を意識した結果だが、施工も容易だったので初級編の外装にはぴったりだった。乾燥して板が収縮してもいいように、突きつけで貼っていくことと、横方向には一本の釘で留めることに気をつける。出隅の納め方はどの施工方法を採っても一工夫必要になるが、垂木程度の太さの角材を加工すればうまくいく。見切り縁を先に廻しておいて、目板を貼り、外装材と一緒に切り揃えるとうまく仕上げることができる。


目次へ戻る




以上で[初級編]はオシマイ-塗装と配線で工房が完成

今回で工房の工事【初級編】をまとめて欲しいという編集の依頼があるので、多少駆け足で説明してしまったが、実際には仕上げ工事は、細かい工夫や気配りが必要で、予想以上に手間と暇がかかる。しかし、建物が次第に完成していくのを最も実感できる作業でもあり、換気扇のフードひとつを付け終えただけで、他愛もなく感激できたりするものだ(請け負い仕事の大工さんには、納期に追われるイヤな工程かもしれない)。

木工事の後には塗装工事もあるが、とりあえずこれで完成。塗装工事については電気配線工事、給排水工事などと一緒に[中・上級編]でまとめて触れることにしよう。

次回からは[中・上級編]・・・


目次へ戻る

コラム

ひとくちコラム 「 続・先住者たち 」 の巻

僕の侵略的所業によって森の奥へと追いやられたのはなにも動物に限ったことではなかった。
そう、植物だ。植物は固体として移動する手段をもたない。
ここは、自生した松、植林された杉や樅、桧などが形成する森林だったが、
伐採と造成で文字どおり樹木の墓場になった。
意図的に残した松や樅以外は、灌木から雑草に至るまで排除した。・・・・はずだった。

ところが、まだ造成も終えていない二年目の春には、そこかしこの盛り土は、
ホウチャクソウと稚児ユリの白い花で一面に覆われたのだ。
三年目にはさらに松の小さな苗やスミレがそれに加わった。

傷ついた表土を癒すかのように、あるいは失われた土地を奪い返すように、可憐に油断なく、彼らは姿を顕した。
なまじ足や羽根を持つ動物に比べて、植物の大地に対する執着の深さを見る想いだった。

この先住者たちには他にも驚かされることがあった。
杉や檜を切りだした後に残された松は、異様なほどに枝が少なく、まっすぐに伸びていたのだ。
圧倒的に多数の杉に囲まれた僅かの松には周りの杉に合せて生育するしかなかったのだ。

そのつもりで森を見回すと、一見平和そうに見える森の情景が違った様相を見せてくる。
そこでは熾烈な植物同士のせめぎあいが展開されているのだ。
互いの枝を落としあい、少しでも抜きん出て光を独占しようとする。
足元からはツタが絡みつき、弱みを見せれば周りの木によって引き倒されてしまう。
さながら人間社会のような生存競争が繰り広げられているのだ。

伐採で残された木が、簡単に風で倒れてしまうのも身につまされた。
木々は、競りあいながらも、森という社会の中で共生していて、
その基盤を失った木が生き延びるのはむつかしい。
実は、すでに10本ほどの木が風や積雪で倒され、その内の2本は建物に被害を与えた。

建築工事で以前の森は消滅し、動物たちは森の奥へ追いやられた。
しかし、地面からは新しい森の担い手たちが盛んに触手を伸ばしてきている。
可憐な稚児ユリやスミレに代わってアザミや葛が縄張りを広げ、
タンポポが頑固な根を張る。松の苗はもう1mの幼木だ。
彼らにはひと筋縄ではいかないたくましさがある。
今年も何度か、草刈に汗を流すことになるはずだ。

続・先住者たち


目次へ戻る