比賀流 快楽的セルフビルド入門

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第7回 設計、基礎工事 [ 上級編 ] ~切土・捨てコン

住居棟の南側セルフビルド初級編と位置付けた作業棟(工房)建設の話はひとまず終え、
今回からは残りの2棟、展示棟、住居棟へと移ろう。

作業棟とは違って、今度はちゃんと設計を依頼している。
設計者は山嵜雅雄氏。根っからのアーティストである。
注文多き建主にして施工者でもある僕(普通、めんどくさい状況である)と、
どんな風に折合いを付けていったのか?ともかく着工!



前回までの4回にわたり、セルフビルド=[初級編]として、木造平屋+トラス屋根の「作業棟(のちに工房)」の建設ノウハウを展開してきた。なぜ初級編かといえば、敷地内に3棟の建物を計画し、最初につくったのがこの工房だったからである。

工房は建物のサイズやスパンが大きく、とっつきにくいところもあった。ただ、水廻りや間仕切が少なく、仕上げがイマイチでも工房なんだから割り切れる(いやそれもアジになる)、といったようにアバウトなO型人間には都合のよい要素が多かったのも事実だ。兎に角、セルフビルドのよい練習になったことは確かだった。ただし、建築として完成度が高いとは、決していい難いものではある。

というわけで、次に建てる2棟(展示棟および住居棟)には、必ずしも自信と余裕をもって取りかかったわけではないのだ。なにしろ、待ち構えていたのは“アーティスト”である山嵜雅雄氏(山嵜雅雄建築研究室)の設計なのである。


アーティスト設計者による絶妙な施主心理操作

今思うと、設計段階での山崎氏との打ち合わせは奇妙なものだった。施主である僕が彼にぶつける注文は、施工の難しい図面になって僕の手元にはね返ってくる。山崎氏にしても、施工者としての僕に気を使うべきか、施主としての僕の意見を尊重すべきか困ったことだろう。しかし、そもそも設計を山崎氏に依頼したのは、自分ではイメージできないような斬新なプランを出してもらうためだったのだ。あれこれと僕が横槍を入れたのでは中途半端な妥協の産物しか生まれない。いくつものプランを出してもらったが、基本的には山崎氏の感性を最大限活用させてもらおうと考えていた。「自分の手に余るような工事は業者に頼めばいい」といった楽観的な気持ちもあった。

最終的に決まったプランを見ていただければ判るが、中・上級編の二棟の建物は作業棟とはまったく次元の違うものだ。三階建て、10mのスパン、全面ガラス、厚さ300mmで4mを越す高さのRC、オーバーハングした床、美しい曲面を描く天井や壁、極めつきは石張りの床だ。予算の総額は何度も念押ししたはずなのに、どうしてこんなプランが出てきたんだろう。施工者(僕)への配慮はどこにあるんだ!一瞬、アーティストとお付き合いしたことを後悔したが、すぐにムラムラと怒りがこみあげてきた。「やればいいんだろ!やってやろうじゃあねえか!」

山崎氏はアーチィストであるだけでなく、優秀な心理学者でもあったようだ。何回もの打ち合わせから、僕の性格も見透かされていたに違いない。 面白さと難しさ!不可思議と可能性!そのMIX加減は絶妙で、僕はしっかりと『その気』にさせられてしまったのだ。


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RC + LVL木造の大小2棟を計画

展示棟・住居棟のプラン展示棟のプランは、斜面に食い込むようにベースコンをめぐらし、1~2階部分をRCで、2~3階部分をLVL(積層材)で組上げ、地形の傾斜に合せた片流れの屋根を一文字葺きで覆うというもの。構造としてはシンプルそのものだ。左右の側壁を開口部で繋ぎ、コアとなる塔の鋼性で補強するかたちある。

それよりもふた回りほど小さな住居棟のほうも、基本的には一緒のデザイン。木道で連結されるこの大小二棟の建物のコンビネーションが、設計上の一番のウリである。展示棟の3階部分はゲストルームとして利用するので、双方の建物から直接アプローチできるように、中間にキュービックな浴室棟を置いた。こうして見ると、ひとつの住宅が備える諸々の機能が敷地内にある建造物に、それぞれ分散してレイアウトした、といえるのかも。


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トランシットは必ず自前のものを

カンタン「トランシット」使いこなし術さて、この魅力的な難題にどこから取りかかるかだが・・・・・?
まず、スキー場のような斜面に位置ぎめをしなければならない。高低差があり、もはやバケツレベラーでは手に負えないので、中古のトランシットを使うことにした(三脚付きで七万円)。この手の機器はリース料金が高い!最初の測量だけでなく、工事の途中でも重宝するし、完成後は望遠鏡としても活用できるので、入手されることをお勧めする(ちなみに、僕は10万円で転売した)。自前の測量器具を担いでうろついているだけで、専門家になったようですこぶる気分がいいものだ。

本来なら、ここで測量機器の使い方について解説をいれるべきなのだが・・・。実は、トランシットに関してはいまだに自信が持てていないのだ。本体を水平に保ち、基点の上に正確に置くことには気を使ったが、迎角?の機能は充分に活用できずじまいだった。ただ、『首が縦にも動くレベラー』は、一人でやる測量にはとても便利な物であることは発見できた。


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絶妙なユンボ・ワークで土イジリ(切土・盛土)

ユンボ百態大まかな方位とレベルを決めたら再びユンボ・ワークだ。借用中の大型ユンボでザクザク削っていく。機械を使ってやっている限りは、この手の土木作業は楽な仕事だ。大掛かりな土いじりといったところで、ふと、子供の頃の砂場遊びを思い出したりする。
ただし、掘削量や深度が増すと危険も伴うので、ユンボは慎重に操作しなければならない。機械は、慣れてくるといろんな使い方ができるようになるものだが、操作の仕方次第では思わぬ動作をすることを承知しておく必要があるのだ。

作業に取りかかると、まず問題になるのは掘りだした土の置き場だ。ダンプが待機しているわけではないので、ユンボの腕が届く範囲で積み上げるのだが、掘った土の体積はもとの数倍にもなるから、たちまち周囲は数メートルの高さの壁で囲まれてしまう。バケットで押したり叩いたりして、土の置き場を作りながらの掘削作業が続く。
さらに深く掘る場合は、予め進入路を作っておいて斜面の上部からも掘り進めていく。足元を削ることになるので細心の注意が必要だが、ここまでやると土の置き場に困ることはなくなる。

雨水の始末も大きな問題だ。掘り下げた場所に流入しないように気をつけないと、ひと雨で元の木阿彌になってしまう。僕の場合、ベースの配筋までやり終えたところで泥の海にされたことがある。予期せぬ大雨で盛り土の堤防が押し流されたのだ。その時はさすがに言葉を失った。


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レベル出しが済んで、いざステージが整った

土を出し終えたらハイド板で平らにし、レベルを出す。まだ修正はできる段階なので50mmほどの誤差で収まっていればOK!地山を削った場合は直接砂利を入れればよいが、盛り土をした場合は、まず岩崩れを入れて固め、水を撒いてさらに踏み固め、その上に少し厚めに砂利を入れる。今度は20mm以内の誤差に収まるように、砂利を均して調整する。

捨てコンを入れる前に、600mmほどの木杭を要所に打ちこみ、マーキングをすませておく。
そろそろレベルも正確にとっておいた方がいい。捨てコンは墨入れのための黒板のようなものなので厚くうつ必要はないが、隅々まで入れるようにする。大きめの木コテか金コテを用意しておくと作業が早い(もちろん自作する)。

まんべんなく捨てコンを打ち終えたら、ステージは整った!といった観になる。いよいよこの上に、スケール1:1の設計図を描き、さらに上へ上へと屋根の先端まで作り上げることになる。

次回は測量のつづきと配筋


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