比賀流 快楽的セルフビルド入門

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第9回 1階配筋・型枠工事 [上級編]

展示棟(左)と住居棟(右)を結ぶ木道 RC造の展棟・住居棟の工事に取り掛かって3ヵ月。
ベースを打ったところまではまだよかった。

木造 [初級編] の発展形の範囲で収まっていた。
しかし、いよいよ配筋・型枠となると、やなり [上級編] だ。

全体の作業量も違うが、細かなディテールへの心配りが必要になる。
それでも、とにかく自分でやってみると、セルフビルドのノウハウは
「面」となって広がってくるものだ。



・・・・・・ベースコン打ち後、脱型から立ち上がり配筋工事

立上がり鉄筋の修正 型枠は、組あげる時と違い、取外しは簡単。ただし、何度も転用するつもりなら丁寧に扱いたい。
付着したセメントをスクレイパーで落とし、きちんと片付けておく。建築現場では片付けはとても大切。
道具の紛失や資材の破損を防ぐためもあるが、事故防止が一番の理由である。
作業の能率だってずいぶん違ってくる。
もともと片付けが大の苦手だっただらしない性格の僕だが、何度も痛い目に遭ううちに、いつの間にか片付け上手な『お掃除おじさん』になっていた。

打ちあがったベースコンの上に改めて墨を打つ。コンパネの位置を確定し、コン打ちの時に動いてしまった立ち上がり筋を修正するためだ。鉄筋位置はしっかりと補正しておかないと、型枠を組む時に苦労させられる。くどいようだが、問題は先送りするほど厄介になる。

補正を終えたら、縦筋の取り付けにかかる。立ち上がり筋は100mmの等間隔で立っているはずだが、動いてしまっている時は縦筋の取りつけの時に最終調整をする。鉄筋のピッチはできるだけ正確に保つように心掛けたい。さらに、縦筋の先端部分を少し曲げておくと理想的だ。

縦筋ガ立ち並んだら、次は横筋の取りつけだ。 何本かの縦筋に100mmピッチでマーキングし、まず作業しやすい高さの横筋を正確に取り付ける。先端部分にもう1本横筋を通すと形が決まってくるので、後は順次配筋していけばよい。

結束線を使っての鉄筋固定は、延々と続く単純作業だ。10X4mの一枚の壁で、ひとつおきに結んだとしても5千回の結線作業をしなければならない。今回の建物では総延長80mの壁面と、ほぼ同量のベースコンに配筋した。単純に計算しても8万回、実際には10万回以上の結線作業 をこなしたことになる。……こんな計算は事前に行うのは禁物だ。

この単純作業を楽しくこなすには、手内職のおばさん達を見習うのがいい。気心の知れた仲間に声を掛けて人海戦術を採る。作業は手先に任せてもできるので、『終日おしゃべりの会』を催せばよいのだ。そして、当然の事ながら夜は飲み会となる。

ダブル配筋の両面を編み終えたら、U字鉄筋を使って要所を連結する。同様にコーナー部分はL字鉄筋で繋ぐ。組あがるにつれて簡単には動かせなくなるので、最終段階ではこまめに水平垂直を測りながら作業を進めよう。


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大ざっぱなようで、繊細さが要求される型枠建込み

立上がり配筋型枠の組上げも一人では難儀な仕事だが、鉄筋のような単純作業ではない。打ち放しRC壁では型枠の工程がそのまま内外装ともなるので、相当に気を使う。

そもそも、RC工事は土木工事の延長で、大雑把な作業だと思っていた。予算が無いのでやむを得ず手を染めるけど、本来目指していた木工の仕事まで荒くなって、悪影響を及ぼすのではないかと真面目に心配したほどだった。結果は逆で、何故か以前より木工の仕事は丁寧になってしまった。

10mの壁をmm単位で組上げ、目違いを出さず、その上、t単位の生コンの圧力にも耐えなければならないのだ、やわな家具作りとは訳が違う!・・・・ということで、型枠はコツコツと一人で積み上げることになった。

設計の山崎氏の図面をもとにして、グラフ用紙に施工図もどきのメモを作りコンパネの割り振り、Pコンの位置などを確認しておく。特にコーナー部分や開口部は要注意!パネルの厚み(12mm)も計算に入れてコンパネをカットするのでまさにmm単位の精度が要求されるのだ。パネルの木口の出し方にも気を使う。吸水性が高く段差が出やすいのでなるべく目立たないようにする。木口にペイントしたり蝋を塗るという方法もある。

セパを通す穴は、型枠の強度だけでなく仕上がりの美しさも考えて位置決めする。Pコンの穴は打ち放し壁面ではアクセントの働きをする。場所によってはセパを通さず、わざわざPコンの穴だけを残す必要も出てくるのだ。


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建込みの勝負は1段目。上段は楽に載せられる。

型枠作業用具および部材 パネルの割り振りが決まったら製作に取りかかる。基本的な製作方法、建込みの手順は【初級編-連載第3回】にまとめてある。

このハッカーの使い方を教えてくれたのは、生コン会社の人だった。ミキサー車の運転手さんにはいろんな経歴の人がいて、様々なことを教えてもらった。元電気屋さんには配線について、元ペンキ屋さんには塗装のコツを。配筋や型枠にいたっては、何人かの人が休日にわざわざ出向いて一緒に作業までしてもらった。

桟木は、両端のこころもち内側に、上下に200mm程ずらして打ちつけておく。保管するときはかさばるが、パネルの間に隙間や段差ができにくい。

手順は図で示したが、長尺の素材なので組あげるのは意外に難しい。特に立ち上がりのU字型材の取りつけ部分、壁のコーナー部分などは気をつけないと後で鉄筋を補充することはできない。

正確に水平を出しながら1段目を決めたら隣り合ったパネルを繋ぐ。釘打ちすると桟木が緩んでしまうので木ネジで締めると具合がいい。1段目さえ決まっていれば上の段は比較的楽に乗せられる。 ただ、セパと鉄筋の位置が重なってしまうことが時折ある。この場合はセパが優先!鉄筋に道を空けてもらうしかない。二三ヶ所の結束線を外せばすむことが多いが、再悪の場合、鉄筋を切断することもある。その代わり、いったんはめ込んだパネルは密集した鉄筋に支えられて倒れることはない。

パネルの積み上げが終わったら通しの桟木をつけていく。桟木や単管の数は多いにこしたことはないが、パネル1枚あたり4~5本あればいいだろう。桟木が倒れてこないように手早く単管をフォームタイに乗せる。桟木を使ってもよいが、通りが出しにくいので横通しはできるだけ単管を使いたい。

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押し引きのバランスが型枠を強固にさせる

型枠建込み(1) フォームタイを締め込んでいくと大きな一枚のパネルが出来あがる。まだ鉄筋と一緒に前後に揺れるが、これを、ジャッキやターンパックを使って垂直に固定するのである。

まず、角材とコンクリート釘でパネルの位置を墨の線に正確に合わせる。
単管やチェーンを当てがうときはフォームタイに絡めた方が位置がずれなくて固定しやすい。
ジャッキで押し、ターンバックで引く。押しと引きの力を拮抗させて大きなパネルを固定する仕掛けである。
水準器を見ながら、押し引きを繰り返して調整する。とにかく、最初の面を精確に設置しておけば、反対側はフォームタイを締めるだけで形が整う。
数セットの単管とチェーンを張り終えると、人が登ったり揺すったりした位ではびくともしないほどしっかりと直立しているはずだ。


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返し壁で蓋をすれば型枠建込み終了

型枠建込み(2) 次は裏側に回っての作業になる。反対側の枠を付けると見えなくなるのでパネル内面の最終チェックをしておく。異常がなければ、まず忘れないうちにスペーサーを取り付けておこう(簡単な作業ほど忘れてしまうことがあるものだ)。続いてパネルの取り付けにかかる。突き出しているPコンにパネルの穴を合わせ、フォームタイをねじ込む。原則としては、取り付けを終えたパネルに近い方(つまり、やり難い所から)留めるようにすればうまくいく。手が届かない箇所はバールや角材を使って合わせ、ネジの頭が出たらすかさずフォームタイを2~3山ねじ込んでおく。6ヵ所の穴の全てにネジの頭が出るまでは締めつけないでおくのがコツだ。 後は同様に、桟木と単管、ジャッキとターンバックでしっかりと固定する。

これで型枠作りはほぼ出来あがり!ユンボで押しても動かないくらい丈夫な枠ができ上がったはずだ。小端面の取り付けはコン打ちまで控えておいて、中に溜まったゴミの掻きだし口にする。独りでの作業だと型枠全体が仕上がるまでに相当な時間がかかる。枯葉なども相応に溜まってしまうのだ。


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障害は自分の力で解決する。「面」のノウハウは強い

型枠建込み(2) ここでは一般的な作業の手順を書いたが、常にこのやり方でやれるとは限らない。例えば、斜面が迫っているような場所では、先に鉄筋を編み上げてしまうと斜面との間には殆ど作業スペースがとれなくなる。工夫を凝らして、斜面に近いほうの造作からこなしていく必要があるのだ。

よくあるケースについては、型枠作業【応用編】として図解しておいたが、実際にはもっといろんな対応を迫られる。困った時に経験者に尋ねるのも大切だが、基本的なことを理解したら、後はできるだけ自分自身で工夫してみよう。うまくいけば相当な自信がつくし、知らない間に業者の人達よりも優れた工法を編み出している事だってあるのだ。逆に他人の技術や知識を当てにしているといつも不安になり、行き詰まってしまいそうな気がする。他人からの情報が『点』とか『線』のように限定されたものであるのに対して、自らの発想は『面』のような広がりが持ってるからだ。

―次回は1階コン打設工事!


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